1: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:29:53 ID:GB4
夏の熱気と男達の汗でむせ返るような工事現場を、小柄な男が身体を引きずるようにして歩いていた。
順平「ほいじゃけそやってそうゆうたやろそうゆうたやろがぁなんでぇのぉ~」
蝉の声が、夏の熱い光とともにじりじりと降り注ぐ。
現場監督「オラッ!! さっさとその木材運べや派遣野郎!!」
順平「敬語使うべきじゃん……」
小声でブツブツと文句を言いながらも、順平は額の汗をぬぐって必死に働いた。
順平「ほいじゃけそやってそうゆうたやろそうゆうたやろがぁなんでぇのぉ~」
蝉の声が、夏の熱い光とともにじりじりと降り注ぐ。
現場監督「オラッ!! さっさとその木材運べや派遣野郎!!」
順平「敬語使うべきじゃん……」
小声でブツブツと文句を言いながらも、順平は額の汗をぬぐって必死に働いた。
2: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:30:35 ID:GB4
現場監督「ほら、今日の日当だ。お前まぁまぁ根性あるじゃねえか。お前さえ良けりゃ次の現場でも使ってやるよ」
順平「あ、ありがとうございますやでほんま(こいつ俺より年下なのに偉そうやな……)」
封筒を受け取った順平はそれを大事そうに作業服の内ポケットにしまった。
彼は今年で37歳になった。
20代の頃にやめたライン工の仕事以来肉体労働なんてロクにしていなかった彼の身体は途方もなく疲弊している。
順平「今日はガッツリ! カツカレーチャーハンでも食べましょうかねぇ~!」
だが遅まきながら働くことの楽しさを覚えた彼にとって、労働の対価として得た日当は少ないながらも彼の心と胃袋を弾ませるものだった。
順平「あ、ありがとうございますやでほんま(こいつ俺より年下なのに偉そうやな……)」
封筒を受け取った順平はそれを大事そうに作業服の内ポケットにしまった。
彼は今年で37歳になった。
20代の頃にやめたライン工の仕事以来肉体労働なんてロクにしていなかった彼の身体は途方もなく疲弊している。
順平「今日はガッツリ! カツカレーチャーハンでも食べましょうかねぇ~!」
だが遅まきながら働くことの楽しさを覚えた彼にとって、労働の対価として得た日当は少ないながらも彼の心と胃袋を弾ませるものだった。
3: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:31:12 ID:GB4
順平「千本桜! ビャオォッ!!!」
鼻歌を唄いながら歩いていた順平は、帰り道にある食堂に入店した。
順平「カツカレーチャーハン大盛でお願いしまスゥゥゥゥゥゥゥ」
店主「あいよ! カツカレーチャーハン一丁!!」
長髪をポニーテールに結った、髭面で大柄な店主が威勢の良い返事をする。
鼻歌を唄いながら歩いていた順平は、帰り道にある食堂に入店した。
順平「カツカレーチャーハン大盛でお願いしまスゥゥゥゥゥゥゥ」
店主「あいよ! カツカレーチャーハン一丁!!」
長髪をポニーテールに結った、髭面で大柄な店主が威勢の良い返事をする。
4: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:31:36 ID:wX1
期待
5: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:31:49 ID:GB4
順平「失礼しますゥゥゥゥ」
順平が席に着くと、店主は順平の前に豪快にビールジョッキを置いた。
すると、まるであらかじめ決められた儀式であるかのように二人は目を見合わせた。
店主「どぉも~~~!!!」
店主が叫ぶ。
順平「syamuでぇ~~~す!!」
店主「シーバターでぇ~~~す!!!」
決め台詞を口にすると、二人は再び目を見合わせてゲラゲラ笑った。
順平が席に着くと、店主は順平の前に豪快にビールジョッキを置いた。
すると、まるであらかじめ決められた儀式であるかのように二人は目を見合わせた。
店主「どぉも~~~!!!」
店主が叫ぶ。
順平「syamuでぇ~~~す!!」
店主「シーバターでぇ~~~す!!!」
決め台詞を口にすると、二人は再び目を見合わせてゲラゲラ笑った。
6: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:32:44 ID:GB4
シバターは満足したように頷くと、厨房に向き直りカツカレーチャーハンの調理にとりかかった。
順平は目の前に置かれたジョッキを注視した。
順平「シバターさん、俺お酒は飲めないんや。成人式のときにワイン飲んでから無理なんやって前にも言ったやろ? あれ、言ったんかな? 言ってないかもしれへんわ確信がないわ」
シバター「ははは。順平が酒が駄目なことくらい知ってるよ。何年の付き合いだと思ってんだよ。それはノンアルコールビールだよ」
順平「いつものオリジナルドリンクの方が良かったでスゥゥゥゥゥゥゥ……」
順平は目の前に置かれたジョッキを注視した。
順平「シバターさん、俺お酒は飲めないんや。成人式のときにワイン飲んでから無理なんやって前にも言ったやろ? あれ、言ったんかな? 言ってないかもしれへんわ確信がないわ」
シバター「ははは。順平が酒が駄目なことくらい知ってるよ。何年の付き合いだと思ってんだよ。それはノンアルコールビールだよ」
順平「いつものオリジナルドリンクの方が良かったでスゥゥゥゥゥゥゥ……」
7: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:32:49 ID:vtU
あり得たかもしれない未来
もう見ることもできない未来
もう見ることもできない未来
8: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:33:29 ID:GB4
シバター「お前も仕事始めてけっこう経つだろ? 雰囲気だけでも仕事の後の一杯ってやつを味わわせてやろうと思ってな」
順平「そういうことならしゃあないわ。ありがたくちょうだいしますわ。ありがたく飲みますわ、ええ」
ブツクサ言いながらも順平はジョッキに口をつけた。そんなに旨いとは言えなかったが、シバターの心遣いと肉体労働の後の喉の渇きのおかげで悪くはなかった。
順平「おい! それってYO! のびハザのネタじゃんか!! アッアッアッアッ!」
ノンアルコールのはずだが順平の気分は不思議と高揚した。
元々カルピスソーダで酔える男なのだ。
順平「そういうことならしゃあないわ。ありがたくちょうだいしますわ。ありがたく飲みますわ、ええ」
ブツクサ言いながらも順平はジョッキに口をつけた。そんなに旨いとは言えなかったが、シバターの心遣いと肉体労働の後の喉の渇きのおかげで悪くはなかった。
順平「おい! それってYO! のびハザのネタじゃんか!! アッアッアッアッ!」
ノンアルコールのはずだが順平の気分は不思議と高揚した。
元々カルピスソーダで酔える男なのだ。
9: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:34:04 ID:GB4
シバター「順平明るいんだよ!」
楽しそうな順平を見てシバターの頬も緩む。
シバター「順平、今日であの日から二年だぜ」
順平「……もうそんなに経つんですねぇ。月日の経つのは早いものですゥゥゥゥ」
楽しそうな順平を見てシバターの頬も緩む。
シバター「順平、今日であの日から二年だぜ」
順平「……もうそんなに経つんですねぇ。月日の経つのは早いものですゥゥゥゥ」
11: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:34:40 ID:GB4
あの日――。
大物Youtuberとして活躍していたsyamuは、突然その舞台を降りたのだ。
あの日以来彼はネットの表舞台から姿を消し、実家からも離れてこうして一人で働いて暮らしている。
派遣の仕事は稼げないが、順平の生活は貧しいながらも充実していた。
大物Youtuberとして活躍していたsyamuは、突然その舞台を降りたのだ。
あの日以来彼はネットの表舞台から姿を消し、実家からも離れてこうして一人で働いて暮らしている。
派遣の仕事は稼げないが、順平の生活は貧しいながらも充実していた。
12: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:35:25 ID:GB4
シバター「なぁ順平。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」
さっきまで緩んでいた頬を引き締め、シバターは真剣な表情で順平に問いかけた。
順平「何のことや?」
シバター「とぼけんなよ。なぜYoutuberをやめたんだ? あんなに登録者もいて、金も稼げたのに」
順平「シバターさんこそ、どうしてYoutuberをやめたんでしょうか? 不思議ですねぇ~」
順平がsyamuをやめたあと、シバターも突如活動を休止したのだ。
彼がここで食堂をやっていることは順平以外誰も知らない。
さっきまで緩んでいた頬を引き締め、シバターは真剣な表情で順平に問いかけた。
順平「何のことや?」
シバター「とぼけんなよ。なぜYoutuberをやめたんだ? あんなに登録者もいて、金も稼げたのに」
順平「シバターさんこそ、どうしてYoutuberをやめたんでしょうか? 不思議ですねぇ~」
順平がsyamuをやめたあと、シバターも突如活動を休止したのだ。
彼がここで食堂をやっていることは順平以外誰も知らない。
13: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:36:08 ID:GB4
シバター「何度も言っただろ。俺はYoutuberをやめてない。俺は、突然Youtuberをやめたお前の後を追って動画のネタにしようとしてるだけだ」
順平「ほうほう、ふむふむ」
シバター「こうして食堂をやっているのだって、お前の汚い食事シーンを撮影してYoutubeにアップしたら稼げるからに決まってるだろ」
順平「でもシバターさんのチャンネルは二年前のあのとき以来更新されていませんねぇ~不思議ですねぇ~」
そう指摘されると、シバターは照れくさそうに顔をそらした。
順平「ほうほう、ふむふむ」
シバター「こうして食堂をやっているのだって、お前の汚い食事シーンを撮影してYoutubeにアップしたら稼げるからに決まってるだろ」
順平「でもシバターさんのチャンネルは二年前のあのとき以来更新されていませんねぇ~不思議ですねぇ~」
そう指摘されると、シバターは照れくさそうに顔をそらした。
14: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:36:56 ID:GB4
シバターは順平に背を向け、厨房での作業を再開した。
シバター「い、いつかアップするんだよ。今はまだそのときじゃない。お前がまたYoutuberとして復活したときにアップした方がバズるからな。それが配信者の嗅覚ってもんなんだよ」
順平「嗅覚……アッアッアッアッ。懐かしいですゥゥゥゥ……」
シバター「ほらよ、カツカレーチャーハンだ」
目の前に置かれたのは、これまた懐かしい料理だ。
シバターが爆笑しながら自分の料理動画を観てくれたことを思い出す。
当時は馬鹿にされていたような気がしていたが、今ではそんな気持ちはすっかり消え失せた。
シバター「い、いつかアップするんだよ。今はまだそのときじゃない。お前がまたYoutuberとして復活したときにアップした方がバズるからな。それが配信者の嗅覚ってもんなんだよ」
順平「嗅覚……アッアッアッアッ。懐かしいですゥゥゥゥ……」
シバター「ほらよ、カツカレーチャーハンだ」
目の前に置かれたのは、これまた懐かしい料理だ。
シバターが爆笑しながら自分の料理動画を観てくれたことを思い出す。
当時は馬鹿にされていたような気がしていたが、今ではそんな気持ちはすっかり消え失せた。
15: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:37:47 ID:GB4
シバター「おかわりもあるからな。どんどん食えよ」
順平「それでは! いただきますゥゥゥゥ。ベチャグチャグチャぺちゃグチャペロ……ンンッ!! うまい! グチャ……」
シバター「相変わらず食い方きたねえなこいつ……」
順平「それでは! いただきますゥゥゥゥ。ベチャグチャグチャぺちゃグチャペロ……ンンッ!! うまい! グチャ……」
シバター「相変わらず食い方きたねえなこいつ……」
16: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:38:25 ID:GB4
カツカレーチャーハンを完食した順平は、デザートのイーミアルにぱくついている。
シバター「なぁ順平。Youtuber活動はもうやらないのか?」
シバターが問いかけるが、順平は答えない。
シバター「知らないわけじゃないだろ? この二年間で、お前はまた伝説化してるんだよ。復活したらかなり稼げるぞ。金のことなら心配するな。機材とかは俺が揃えてやるから」
シバター「なぁ順平。Youtuber活動はもうやらないのか?」
シバターが問いかけるが、順平は答えない。
シバター「知らないわけじゃないだろ? この二年間で、お前はまた伝説化してるんだよ。復活したらかなり稼げるぞ。金のことなら心配するな。機材とかは俺が揃えてやるから」
17: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:39:08 ID:GB4
しかしやはり順平は答えなかった。
シバター「まったく、本当に嗅覚がないよなこいつ……」
諦めた様子でシバターは厨房へ向き、カツカレーチャーハンの皿を洗い始めた。
彼の背中を見て、順平は人知れず笑顔になるのだった。
順平はシバターのそんな背中をこれからも……いつまでも見られると思っていた。
シバター「まったく、本当に嗅覚がないよなこいつ……」
諦めた様子でシバターは厨房へ向き、カツカレーチャーハンの皿を洗い始めた。
彼の背中を見て、順平は人知れず笑顔になるのだった。
順平はシバターのそんな背中をこれからも……いつまでも見られると思っていた。
18: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:39:44 ID:GB4
翌日。
今日はかなりキツい現場だったが、順平は何とか仕事をやり遂げた。
残業をしたのでいつもより少し空は暗い。
激務による凄まじい空腹を満たすべく、順平は今日もシバターの店へと向かっていた。
順平「別に寂しいというわけではないんですよ。寂しいというわけではないんですが、今日もシバターさんの店で食べようかと思いマスゥゥゥ」
今日はかなりキツい現場だったが、順平は何とか仕事をやり遂げた。
残業をしたのでいつもより少し空は暗い。
激務による凄まじい空腹を満たすべく、順平は今日もシバターの店へと向かっていた。
順平「別に寂しいというわけではないんですよ。寂しいというわけではないんですが、今日もシバターさんの店で食べようかと思いマスゥゥゥ」
19: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:41:45 ID:GB4
空腹も理由の一つではあるが、誰もいないアパートに帰るのが寂しいというのが本当のところだ。
順平「あれぇ!? 丘people!?」
店の前に到着すると、順平は異変に気がついた。
「営業中」の札が出ていないのだ。
今日は定休日ではない。今は営業時間のはず。
シバターはルーズそうに見えて几帳面な男だ。
順平は嫌な予感がした。
順平「あれぇ!? 丘people!?」
店の前に到着すると、順平は異変に気がついた。
「営業中」の札が出ていないのだ。
今日は定休日ではない。今は営業時間のはず。
シバターはルーズそうに見えて几帳面な男だ。
順平は嫌な予感がした。
20: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:42:19 ID:GB4
順平「シバターさん! シバターさん!」
順平は店の扉を叩いた。
返事はない。
順平「誰か出てこいやゴラァ!!」
大声を出してみるが、やはり返事はなかった。
順平は店の扉を叩いた。
返事はない。
順平「誰か出てこいやゴラァ!!」
大声を出してみるが、やはり返事はなかった。
23: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:43:47 ID:GB4
順平は思い切って扉に体当たりをした。
現場作業で鍛えられた体は、扉をぶち破ることができた。
順平「シバターさ……!!」
シバター「うう……」
順平「シバターさん! 大丈夫ですか!?」
シバターはカウンターの前の床にうつ伏せに倒れていた。
シバター「順平……遅いんだよ……」
順平に気がついたのか、シバターは力なく顔を上げた。呼吸は荒く、身体を起こす力さえないようだった。
現場作業で鍛えられた体は、扉をぶち破ることができた。
順平「シバターさ……!!」
シバター「うう……」
順平「シバターさん! 大丈夫ですか!?」
シバターはカウンターの前の床にうつ伏せに倒れていた。
シバター「順平……遅いんだよ……」
順平に気がついたのか、シバターは力なく顔を上げた。呼吸は荒く、身体を起こす力さえないようだった。
25: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:44:16 ID:GB4
順平「シバターさん! 今救急車を呼びマスゥゥゥ!!」
店の電話で順平は救急車を呼んだ。
救急車を待つ間、床に横たわるシバターの大きな身体を見て焦りがつのる。
しばらくしてやって来た救急車にシバターは乗せられた。順平は付き添いとして同乗することになった。
その日、シバターは目を覚まさなかった。
店の電話で順平は救急車を呼んだ。
救急車を待つ間、床に横たわるシバターの大きな身体を見て焦りがつのる。
しばらくしてやって来た救急車にシバターは乗せられた。順平は付き添いとして同乗することになった。
その日、シバターは目を覚まさなかった。
26: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:44:54 ID:GB4
次の日、結局シバターが心配で一睡もできなかった順平は医者に呼ばれた。
医者「シバターさんの親族の方ですか?」
順平「いえ……友人ですが……」ソソソソ
医者「実はシバターさんの親族の方の連絡先がわからないんですよ。あなたは何かご存知ないですか?」
順平「オゥイヤ……イヤイヤ……」
もう何年もの付き合いになるのに、順平はシバターの実家の場所さえ知らなかった。
医者「シバターさんの親族の方ですか?」
順平「いえ……友人ですが……」ソソソソ
医者「実はシバターさんの親族の方の連絡先がわからないんですよ。あなたは何かご存知ないですか?」
順平「オゥイヤ……イヤイヤ……」
もう何年もの付き合いになるのに、順平はシバターの実家の場所さえ知らなかった。
27: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:45:26 ID:GB4
医者「そうですか」
順平「あの、シバターさんは助かるんでしょうか。気になるところです」
医者「実は彼はとても重い病気に侵されています。このままでは持って数カ月……」
数カ月。
信じられない言葉が順平の心臓の鼓動を速める。
順平「おい……それってYO……余命宣告じゃんか……」
順平「あの、シバターさんは助かるんでしょうか。気になるところです」
医者「実は彼はとても重い病気に侵されています。このままでは持って数カ月……」
数カ月。
信じられない言葉が順平の心臓の鼓動を速める。
順平「おい……それってYO……余命宣告じゃんか……」
29: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:46:11 ID:GB4
シバターの命があと数カ月?
もうシバターの料理を食べられない?
シバターの笑顔が見られない?
嘘だ。
順平「先生、シバターさんを助ける方法はないのでしょうか」
医者「残念ながら日本の医療では不可能です。ですが海外でなら、彼の病を治せるかもしれません」
順平「それなら、海外で……」
藁にもすがるような順平の表情に対して、医師の顔は曇った。
医者「しかし……海外では保険がききません。多額の医療費がかかります」
多額の医療費……。
もうシバターの料理を食べられない?
シバターの笑顔が見られない?
嘘だ。
順平「先生、シバターさんを助ける方法はないのでしょうか」
医者「残念ながら日本の医療では不可能です。ですが海外でなら、彼の病を治せるかもしれません」
順平「それなら、海外で……」
藁にもすがるような順平の表情に対して、医師の顔は曇った。
医者「しかし……海外では保険がききません。多額の医療費がかかります」
多額の医療費……。
30: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:46:38 ID:GB4
しかし、シバターは大物Youtuberとして二年前までは稼いでいたのだ。貯金でそれくらいはまかなえるはず……。
順平「10万か? 100万か? 1000万か? 0はないと思うわ。0はないと思う」
ところが医師の口にした額を聞いて順平は仰天した。
以前なんの気なしに聞いたシバターの貯金額より遥かに高い金額だったからだ。
こんな額、シバターでも払えるわけがない……。
医者「とにかく、今申し上げられるのはこれくらいです。それはそうと、あなたも寝たほうがいいのではないですか? 顔色が悪いですよ」
順平は放心状態になって、シバターの病室に戻った。
順平「10万か? 100万か? 1000万か? 0はないと思うわ。0はないと思う」
ところが医師の口にした額を聞いて順平は仰天した。
以前なんの気なしに聞いたシバターの貯金額より遥かに高い金額だったからだ。
こんな額、シバターでも払えるわけがない……。
医者「とにかく、今申し上げられるのはこれくらいです。それはそうと、あなたも寝たほうがいいのではないですか? 顔色が悪いですよ」
順平は放心状態になって、シバターの病室に戻った。
31: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:47:18 ID:GB4
大きな肉体がベッドに横たわっている。
心電図が描く繊細な線が、シバターの屈強な身体にはまったく似つかわしくないように思えた。
順平「シバターさん……」
順平は考えた。
どうしたらシバターを助けられる?
シバターの貯金でさえ医療費はとてもまかなえないのだ。
自分の派遣の給料ではもちろん不可能だ。
もう自分には何もできないのか?
シバターのためにできることは何一つないのか?
順平は胸ポケットから封筒を取り出した。
それは今日の日当の入った封筒――ではなく、中には手紙が入っていた。
心電図が描く繊細な線が、シバターの屈強な身体にはまったく似つかわしくないように思えた。
順平「シバターさん……」
順平は考えた。
どうしたらシバターを助けられる?
シバターの貯金でさえ医療費はとてもまかなえないのだ。
自分の派遣の給料ではもちろん不可能だ。
もう自分には何もできないのか?
シバターのためにできることは何一つないのか?
順平は胸ポケットから封筒を取り出した。
それは今日の日当の入った封筒――ではなく、中には手紙が入っていた。
32: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:48:02 ID:GB4
手紙は変色していて、ところどころ破けておりセロテープで補修された跡がある。
何度も繰り返し目を通したのが一目でわかる。
「syamuさんへ。
ぼくはsyamuさんののびハザ実況がだいすきです。
syamuさんののびハザ実況動画がまたみたいです。
復活した後のsyamuさんはぼくはあまりすきじゃありません。
ぼくは前のsyamuさんがすきです。
おもしろいけど、ちょっとかっこつけてて変なことも言うし、おんなの人がだいすきなsyamuさんがすきです。
でも復活した後のsyamuさんはなんだかへんです。
前のsyamuさんに戻ってください。
まってます。」
何度も繰り返し目を通したのが一目でわかる。
「syamuさんへ。
ぼくはsyamuさんののびハザ実況がだいすきです。
syamuさんののびハザ実況動画がまたみたいです。
復活した後のsyamuさんはぼくはあまりすきじゃありません。
ぼくは前のsyamuさんがすきです。
おもしろいけど、ちょっとかっこつけてて変なことも言うし、おんなの人がだいすきなsyamuさんがすきです。
でも復活した後のsyamuさんはなんだかへんです。
前のsyamuさんに戻ってください。
まってます。」
33: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:49:28 ID:GB4
おそらく小学生くらいの男の子の手によって書かれたであろう手紙だ。
拙い字ではあるが、書いた人の真摯な想いが伝わってくる筆跡だった。
順平はこの手紙を読んで引退を決意したのだ。
二年前の自分は本当のsyamuじゃない。
あれはsyamuのモノマネをした順平だった。
本当のファンは、この手紙を書いてくれた子なのだ。
炎上した後のファンは、syamuをあざけ笑うためだけにsyamuの動画を観ているだけだった。
本当の意味で自分の動画を楽しんでくれて、応援してくれていたのはこの手紙の子のようなファンなのだ。
そんなことさえ気づかずに調子に乗っていた自分が恥ずかしくなり、順平はsyamuをやめてネットから姿を消したのだ。
拙い字ではあるが、書いた人の真摯な想いが伝わってくる筆跡だった。
順平はこの手紙を読んで引退を決意したのだ。
二年前の自分は本当のsyamuじゃない。
あれはsyamuのモノマネをした順平だった。
本当のファンは、この手紙を書いてくれた子なのだ。
炎上した後のファンは、syamuをあざけ笑うためだけにsyamuの動画を観ているだけだった。
本当の意味で自分の動画を楽しんでくれて、応援してくれていたのはこの手紙の子のようなファンなのだ。
そんなことさえ気づかずに調子に乗っていた自分が恥ずかしくなり、順平はsyamuをやめてネットから姿を消したのだ。
34: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:50:14 ID:GB4
次こそは自分の力でアパートを借り、機材を揃え、再び一から配信者としてやり直そうと思い、働き始めた。
だから派遣の安い給料での肉体労働も苦にならなかったし、初めて前を向いて自分の力だけで生きてみようと思えたのだ。
順平は考えた。
もし、今自分が復活したら――シバターを助けられるだろうか?
syamuが再びネットに顔を出せば、おそらくネットはざわついて、再び日本はsyamu一色に染まるだろう。
金だって動くはず。
今の自分は二年前の自分よりだいぶ成長したはずだ。
シバターの言う嗅覚だって身に付いたと思う。以前よりうまく稼げる自信はある。
しかし――。
だから派遣の安い給料での肉体労働も苦にならなかったし、初めて前を向いて自分の力だけで生きてみようと思えたのだ。
順平は考えた。
もし、今自分が復活したら――シバターを助けられるだろうか?
syamuが再びネットに顔を出せば、おそらくネットはざわついて、再び日本はsyamu一色に染まるだろう。
金だって動くはず。
今の自分は二年前の自分よりだいぶ成長したはずだ。
シバターの言う嗅覚だって身に付いたと思う。以前よりうまく稼げる自信はある。
しかし――。
35: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:51:01 ID:GB4
しかし、そんな人気は本当の人気じゃない。
そのためにこの二年間頑張ってきたわけじゃない。
syamuという名を捨て、自分の力だけで再び配信者としてやり直す――それだけを目標にしてきた。
そんな自分の気持ちを捨ててシバターを助けていいのだろうか?
何より、そんな中途半端な気持ちで復活したところでうまく稼げるわけが――。
シバター「うっうぅ……」
そのためにこの二年間頑張ってきたわけじゃない。
syamuという名を捨て、自分の力だけで再び配信者としてやり直す――それだけを目標にしてきた。
そんな自分の気持ちを捨ててシバターを助けていいのだろうか?
何より、そんな中途半端な気持ちで復活したところでうまく稼げるわけが――。
シバター「うっうぅ……」
36: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:51:41 ID:GB4
順平「シバターさん!?」
順平は思わず身体を起こした。
寝言だろうか。
シバターは目を閉じたままうわ言のように声を出した。
シバター「ギャハハハ……俺今涙流して笑ってんだけど……えっ!? カレー!? こんなお兄ちゃんイヤだよなぁ~……100点だろ? ほらぁ~やっぱり!! オリジナルと言い張るのがすげぇよなぁ~!! ……Sだね。気持ち悪いね……」
順平は思わず身体を起こした。
寝言だろうか。
シバターは目を閉じたままうわ言のように声を出した。
シバター「ギャハハハ……俺今涙流して笑ってんだけど……えっ!? カレー!? こんなお兄ちゃんイヤだよなぁ~……100点だろ? ほらぁ~やっぱり!! オリジナルと言い張るのがすげぇよなぁ~!! ……Sだね。気持ち悪いね……」
37: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:52:30 ID:GB4
これはシバターが初めてsyamuの動画を観たときの反応だ。
目を閉じてはいるが、シバターは笑顔で、とても楽しそうな表情を浮かべている。
順平はハッとした。
自分のファンはこの手紙の子だけじゃない。
シバターだって同じだ。
シバターも変な色眼鏡なしに自分の動画を見て笑ってくれた。
そりゃあ、笑いの方向性はちょっと歪ではあったけど……でも、シバターも自分のファンであることに変わりはない。
目を閉じてはいるが、シバターは笑顔で、とても楽しそうな表情を浮かべている。
順平はハッとした。
自分のファンはこの手紙の子だけじゃない。
シバターだって同じだ。
シバターも変な色眼鏡なしに自分の動画を見て笑ってくれた。
そりゃあ、笑いの方向性はちょっと歪ではあったけど……でも、シバターも自分のファンであることに変わりはない。
38: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:53:12 ID:GB4
貝塚のあそびばまでわざわざ来てくれたし、順平がsyamuをやめてからも、シバターは配信者をやめてまでこうしてついてきてくれた。
順平はわかっていた。
散々悪態をついてはいたけれど、シバターは順平のことが心配でYoutuberをやめたのだ。
もう二度とsyamuには関わらないと言っていたのにも関わらず。
順平「シバターさん……」
モグラアイから涙がこぼれる。
順平はわかっていた。
散々悪態をついてはいたけれど、シバターは順平のことが心配でYoutuberをやめたのだ。
もう二度とsyamuには関わらないと言っていたのにも関わらず。
順平「シバターさん……」
モグラアイから涙がこぼれる。
39: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:53:54 ID:GB4
順平「BOW。馬鹿な俺はわからず屋やな……。俺のファンはここにもおったんや。この二年間、ずっと側にいたんや……」
40: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:54:37 ID:GB4
三年後。
とあるニュースがネットを騒がせていた。
とあるニュースがネットを騒がせていた。
41: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:55:08 ID:GB4
「大物Youtuberのsyamu、三度目の引退!?
三年前に電撃復活したsyamuだが、本日突然引退を発表した。
登録者数が1000万人を突破したばかりの自身のチャンネルにて、ほいじゃまったの~と言い残してチャンネルを削除したのである。
この突然の奇行にネットは騒然としている」
三年前に電撃復活したsyamuだが、本日突然引退を発表した。
登録者数が1000万人を突破したばかりの自身のチャンネルにて、ほいじゃまったの~と言い残してチャンネルを削除したのである。
この突然の奇行にネットは騒然としている」
42: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:56:23 ID:GB4
順平は晴れやかな表情で道を歩いていた。
現場作業をしていた頃によく通っていた懐かしい道だ。
天気は快晴。
澄み渡るような青空が頭上に広がる。
ポケットの中のスマホには数えきれないほどの通知が飛んでいる。
順平はスマホを取り出し、電源を切った。
今日は彼にとって特別な日だ。
誰にも邪魔をされたくない。
現場作業をしていた頃によく通っていた懐かしい道だ。
天気は快晴。
澄み渡るような青空が頭上に広がる。
ポケットの中のスマホには数えきれないほどの通知が飛んでいる。
順平はスマホを取り出し、電源を切った。
今日は彼にとって特別な日だ。
誰にも邪魔をされたくない。
43: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:57:11 ID:GB4
慣れ親しんだ道を進むと、一軒の食堂が目に入った。
その光景に順平の心は高鳴った。
順平「ほほ~!」
心の準備をして、順平は扉に手をかけた。
ガラガラッという音とともに、店内の景色が目に入る。
カウンターに立つ大柄な男がこちらを向く。
二人は外の太陽にも負けないくらい眩しい笑顔を浮かべた。
その光景に順平の心は高鳴った。
順平「ほほ~!」
心の準備をして、順平は扉に手をかけた。
ガラガラッという音とともに、店内の景色が目に入る。
カウンターに立つ大柄な男がこちらを向く。
二人は外の太陽にも負けないくらい眩しい笑顔を浮かべた。
45: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:58:04 ID:GB4
「オィィィィィィィッス!! どうもぉ~~~!!! syamuでぇ~~~す!!」
おわり
おわり
46: 大物Youtuber速報 19/07/17(水)14:58:23 ID:D3f
乙
https://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1563341393/
コメント欄👽
コメント一覧 (11)
oomonoyoutuber
がしました
oomonoyoutuber
がしました
こちらは一切なにもできません
場所はどこかの公園とかで外で構いません
2000でいいのでサポ希望です
今から会えます
あと水着できてほしいとかなら
水着で行くことも可能です!
oomonoyoutuber
がしました
oomonoyoutuber
がしました
oomonoyoutuber
がしました
警告:0点…
oomonoyoutuber
がしました
oomonoyoutuber
がしました
oomonoyoutuber
がしました
oomonoyoutuber
がしました
コメントinじゃねーの!? 誹謗中傷は控えめにお願いしますウウウ
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