岡くん
そう遠くない未来、日本・大物X年、日本の親たちは元号が変わっても働かぬ高齢無職のごく潰しを養うことに疲れ切っていた。
そんな中親たちのうちの誰かが言い出したlet them fight ゛ヤツらを戦わせろ゛と。
親が高齢無職を家を追い出す更生施設に入れると脅して戦わせるストリートファイトはSファイト、もしくは単にエスと呼ばれ日本各地で行われるようになった。
審判無し目つき金的あり武器の使用双方の親の同意があれば可能、選手の安全を一切考慮しない過激な試合はニコニコ動画などで配信される。
投げ銭や広告収入で車を新車に買い変えるほど儲けた家もあったが、うんこ製造機に今まで使った金額を考えれば微々たる儲けだ。
世間では金がもらえる粗大ごみ出しだという非難も一部あったが、鬱屈して窮屈な時代に命がけで戦う無職たちの醜態を大衆が喜んだことも確かだ。

順平自身お昼のワイドショーなどでSの事を知ってはいたが、まさか夕食後に焼肉に参加を求められるとは思っていなかった。

焼肉「順平Sに出るか、五十万もらって家を追い出されるか決めろ」

順平「お、オラ殴り合いなんて怖いだで、嫌だでオトサン」

焼肉「殴り合いどころじゃない殺し合いじゃ、あとワシらもお前の面倒見るのはもう嫌じゃ、二つに一つじゃ今決めろ」

カスゴリをチラ見して助けを求めるが黙々と食器を洗うばかりだ、もう両親の間で順平がSに出るか家から追放するかは決定事項のようだ。

順平「オトサン、参加したら死ぬ可能性もあるだで」

焼肉「殺し合いじゃいうたろ、素人のただの殴り合いでどうして金が儲かる?命がけで戦うから受けるんじゃ」

順平「オラが死ぬかもしれないんだで!かわいいかわいい子供がそんな目にあって悲しくないんだで!?」

焼肉「……」バチコーン!バチコーン!

順平「ビャオ!」

焼肉の拳が順平の頭に叩きつけられる、順平の親子の情に訴える作戦は大失敗に終わった順平は勘違いしていた。
家族の絆や愛情は有限である、いかに深かったり大きかったりしようとも酷い息子や酷い親ならそれは何時か尽きるものなのだ。
焼ゴリは順平の衣食住を愛情で面倒見ていたわけではない、順平が何かやらかしてかわいい娘たちにこれ以上迷惑をかけないように世話をしていただけだ。
自宅公開やオフパコのための貝塚勃起結界突破にゾット帝国のあたりでわずかに感じていた順平に対する愛情は尽きていた。
合法的に後腐れなく処理できるSの登場と社会がそれを黙認し、国民が娯楽として無職の殺し合いを消費する異常な社会において順平の処理を戸惑う理由など存在しない。
コンナノオカシイダデとシクシクと泣く息子を見ながらビールを飲む、しばらくして順平はしぶしぶSに参加すると答えた焼肉は手切れ金が浮いたことに少しほっとした。


深夜1時、焼ゴリは順平を後部座席に乗せて泉南イオンへRAV4を走らせる。
バックミラーを見ると順平は黒電話状態でじっとしている、これから殺し合いをさせられるにしては落ち着いている現実感が無いのかもしれない。

焼肉「おい」

ゴリ「……ほれ」

焼肉はカスゴリに合図し今回のSで使う武器を順平に渡した、オーバーグラス(¥ 1,790)だ。

順平「オトサン、コレ」

焼肉「投げつけたりできるだろ」

順平「ホ、ホウチョウトカ」

焼肉は何か言う順平を無視してラジオをつけた、ぼそぼそした業人の泣き言を音楽の力が車内から吹き飛ばす。


10分後たどり着いた泉南イオンの駐車場は暗く静かだった、焼肉はPCを操作し順平が買って埃をかぶっていた車載カメラで生放送を開始した。
対面には使い込まれた軽自動車が一台止まっている、中から背の低い老女と順平並みに小さな男が降りてきた、手には抜き身の出刃包丁を持っている。

順平「……オトサン」

焼肉「出ろ」

順平「ア、アシタハロワイクダデ、ダカラ、ダカラ」

焼肉「ハァ~、わかったカスゴリ」

焼肉とカスゴリは車から降り順平を車から引きずり出した、順平は泣き叫び暴れるがカスゴリは順平の言葉にも抵抗にも揺るがず焼肉は無言で順平の足を引っ張る。

老女「難波猥褻入道のオーナーさんですか?」

焼肉「はい、あなたがリトル・ボーイのオーナですね」

お互いに親とは言わない、Sファイターのオーナーとしてここに来た、オーナーと呼ばれてハイと答えたことに少し胸が痛んで焼肉はまだ自分は親心を持っていたかと意外に思った。


順平「嫌だで!助けて!オトサン!」

カスゴリに押さえつけられ涙を流す順平にオーバーグラスをつける。

焼肉「人生最後の大一番じゃ思いっきり暴れてこい」

それでも泣いている順平の尻をカスゴリが蹴飛ばす。

順平「オ、オカサン」

カスゴリ「さっさと行って死ぬなり勝つなり好きにせぇ」

自分の娘二人が宿舎に寄り付かないのは順平のせいだとカスゴリは思い込んでいた、娘に孫が産まれた今順平に注がれるはずの愛情はほぼそちらに移っていた。
順平は震えながらリトル・ボーイとやらを振り返る、原子爆弾を名乗る小男はユピピと笑いながら包丁を両手で握って構えている。

リトル・ボーイ「ギャハハ本舗くっせぇくっせぇネトウヨ引きこもりが出てきたぜ、劣等(列島)な倭猿めわたしが始末してやる」

小男の開口一番焼肉は彼を順平級のSと分類した。

リトル・ボーイ「おい!おっさん!殺す前に聞いとくけどさ、最終学歴は、何?」

順平「ヒッ、ミ、ミサキダデ」

リトル・ボーイは腹を抱えてゲラゲラと笑い出した、ヲヲヲーヲヲ、ヲーヲヲと鳴く小男を見て老女は泣いている、焼肉には痛いほど気持ちがわかった。

リトル・ボーイ「早稲田卒の俺の前によく顔出せたな、低学歴の人生の敗残者は頭をコンクリに擦りつけて目上の者を敬え!」

順平「?ワセダマデイッテドウシテコンナトコロニイルダデ?」

包丁を向けられてブルブル震えていた順平のことだ煽る意図は無く、ただ単に疑問に思ったことをそのまま口に出してしまっただけなのだろう。
だがその一言はリトル・ボーイの顔から笑みを一瞬でかき消した、彼は両手で握った包丁を振りかぶり順平に襲い掛かった。


リトル・ボーイ「ユピ!ユピー!ユピ!」

順平「ヤ、ヤメテ!タスケテ!オトサン!」

両手で握った包丁を振り回しながら逃げ回る順平を必死に追いかけるリトル・ボーイ。
武道についてまるで知識は無いがリトル・ボーイの殺人のための包丁使いは恐らく間違っているだろう。
両手で包丁を握っているなら腰だめにして順平に突進するように使えばいい、振り回すなら片手で充分だろう。
それをリトル・ボーイはまるでアニメ的な巨大な剣を振り回しているように大きく振りかぶっては包丁を振り抜き、薙ぎ払うように刃を走らせる。
無駄の多い大ぶりな動きを順平は避けながら必死に逃げ回っている、なんという塩試合だ。
焼肉がチラっと老女の方を見ると彼女はアスファルトに正座し合掌して必死に祈っている。

老女「オトウサン、ナオヒロヲツレテイッテクダサイ、モウゲンカイデス、ドウカヒトオモイニドウカドウカ」

あの老女も息子の死を真剣に願っているのか……焼肉はしばらく考えて逃げ回る順平に駆け寄り頭を殴りつけた。


順平「エハァッ!?」

焼肉「しっかり戦わんか!この業人め!」

焼肉は順平の頭を押さえつけ叩きながら小さな声で囁く。

焼肉「順平、タックルじゃあいつは遅いし頭も悪くて力も弱い体当たりして馬乗りになれ一か八かじゃ」

順平「……」

焼肉が順平に怒鳴るでもなくため息もつかずただ順平のためにアドバイスしたのはもう何年ぶりだろう。
順平は静かにうなづいて焼肉は順平の頭から手を離した。

リトル・ボーイ「ヘハッ、ヘハァ、フーフー、マテワザル、ユピーヒューヒュー」

ただ包丁を振り回しながら少し走っただけでリトル・ボーイは顔面蒼白の汗まみれだ。
頭に障害があるのに知能だけは高いタイプだと思っていたが体は順平より不自由なようだ、焼肉は改めて老女とリトル・ボーイに同情した。


順平「ビャオォォオオオオ!!!」

リトル・ボーイ「ユピ!」

順平は両手を広げて奇声を上げながらリトル・ボーイに突撃した。
刃物を持っていて相手は丸腰という有利があるにも関わらずリトル・ボーイはへっぴり腰になって包丁を突き出して守りの体制を取った。
順平はそのままラグビーのタックルのように低姿勢で小男に体当たりし、頭から彼をアスファルトに叩きつけた。
くぐもった悲鳴を上げた小男に順平は馬乗りになり握った拳で何度も殴りつける、一発二発三発、まるで力のこもっていないパンチだがS同士の戦いだ。
順平の拳がさく裂するたびに彼は悲鳴をあげ痛い痛いと泣き叫ぶ、ポコンポコンと叩かれて半泣きの小男はようやく自分が包丁を持っていた事を思い出したようだ。

リトル・ボーイ「ユビィィ!」

順平「うぐっ……」

順平の腹に包丁が突き刺さった、ほんの先っちょが少しだけうまく肋骨に刺さったのか白いシャツが真っ赤に染まっていく。
痛みにひるむのではなく半狂乱になった順平はますます力強くリトル・ボーイを殴りつけるポコンポコン、思えばリトルボーイを一応広島県人が殴りつけるとはなんだか感慨深い。
ついにリトル・ボーイは包丁を話して両手で一生懸命に顔を守った、順平は包丁を引き抜くと両手で逆手に持ち岡君の胸に突き刺した。

リトル・ボーイ「ギギッ!あ、あ」

小男の目が見開かれ血でサイズの合わない安物のスーツが真っ赤に汚れていく、順平の勝利だ。


試合の後、焼ゴリは泣きながらリトル・ボーイに抱き着く老女を手伝って彼を死体袋に入れた。
000に通報しSが終わったことと死体の回収を警察に頼む、焼肉が携帯に向かってしゃべる間カスゴリは鳴いている老女の肩を抱いてまともだったころの息子の話を聞いてやっていた。

老女「あの子はあんな心のねじ曲がった差別主義者じゃなかったんですよ、勉強が好きで一生懸命な子だったんですよ」

焼肉は腹を抑えてうめいている順平の腹の傷をガムテープでぐるぐる巻きにして止血してやる。

順平「オトサン、ビョウイン」

焼肉「何を言っとるんじゃ、お前は?」

焼肉は掲示板に明日のSの対戦相手を募る、インナーチャイル道のオーナーからさっそく試合の申し込みが来た、他にも2、3件。

順平「オトサン、チガデテシンジャウダデ、タスケテ、タスケテダデ」

焼肉「殺すためにSに参加させたんだぞ?何を言っとるんだ業人が」

Sに勝利して殺しの味を覚えた無職が世の人々に危害を加えてはいけない。
暗黙の了解としてSに出した無職は人を殺した場合、死ぬまでSに出続けなければならない、順平は戦い続けなければいけない日本中の無職を殺しつくすか相手から逆に殺されるまで。



695: Sファイト :2018/07/05(木) 01:02:23
終わりです、まぁsyamuさんは自分の身は自分で守れると思うんで頑張ってほしいものでスゥゥゥ。

696: 名もなきゾット帝国民 :2018/07/05(木) 02:07:45
インナーチャイル道で草
コンクリートリングと有刺鉄線で囲った状態で戦って処分されて欲しい

697: 名もなきゾット帝国民 :2018/07/05(木) 06:52:18
次戦でたれぞうとの対戦カード引き当ててあっけなく始末されそう

698: 名もなきゾット帝国民 :2018/07/05(木) 10:44:35
岩間「おめぇが対戦者かボケェ!」

699: 名もなきゾット帝国民 :2018/07/05(木) 10:47:51
順ちゃんはつまらない塩試合しかできなさそう

700: 名もなきゾット帝国民 :2018/07/05(木) 12:55:10
これは続編を期待してしまうだで

701: 名もなきゾット帝国民 :2018/07/05(木) 13:13:05
オモシレッ…!
終わりとはいわず決勝まで読みたいだで

702: 名もなきゾット帝国民 :2018/07/05(木) 16:30:00 
決勝というか次の試合で負けそう
カツドンと戦ったとして勝てるビジョンが見えない
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/movie/10596/1524068680/